不思議な女の子 「自作」

第1章 リスの魂

20xx年x月x日に生まれた女の子は、2000gに満たない未熟児だった。
自分の力で母乳を吸うことが出来なかったので、点滴での栄養注入によって育てられた。
クニコと名付けられた女の子は約半年間の入院を経て帰宅した。
クニコは離乳食をなかなか受け付けなかった。
若干成長が遅く、ハイハイをし始めたのは2歳の誕生日を迎えようとする目前だった。
あまりの成長の遅さに小児科検診を受けた。
小児科医:不思議な能力をもったダウン症ですねとの診断だった。
お父さんやお母さんは帰宅後、クニコを抱き締めながら泣いていた。
クニコ:ママ、どうして泣いているの? とお母さんの涙を拭いてあげていた。
まだ何もわからないはずのクニコだが、言葉を発したのもまるで初めてだった。
お父さんお母さんはビックリして
お父さん:クニコが話した!
お母さん:本当ね!
と喜んでいたが、クニコ自身に話したという意識はなく、両親が喜んでいる理由をわかるわけがなかった。
クニコは自分の感情はないけれど、他人の心を読むことが出来る不思議な子だった。
人見知りをしない反面、知らない人から声をかけられると喜んで付いて行ってしまいそうな子どもだったので、親からは常に監視をされているような状況にもあった。
2歳半になり、生まれてはじめて連れて行ってもらった動物園では、大きな動物には興味を示さなかったが、リスやレッサーパンダ、ハムスター等の小動物との触れ合いは楽しんでいる感じだった。
お父さん:さぁ、沢山遊んだね。
お母さん:そろそろ帰るわよ。
クニコ:リスさんを家に連れて帰りたい
だが、動物園で飼育されている動物を家に連れ帰ることは出来ない。
クニコ:おうちに連れていけないって。残念だけどまた遊びに来るね。バイバイ。
そう言いながら素直にリスを元の場所へ戻してあげた。
クニコは車の中で先ほどの動物たちとの触れ合いを思い出していた。
帰宅後、しばらくしてからクニコの部屋にさっき動物園で戻したはずのリスを発見した。
ビックリしたクニコは、
クニコ:どうしてここにいるの? 急いで動物園に返さなきゃ!
とそのリスを捕まえようとしたけれど、ジッとしているはずのリスはなかなか捕まえられなかった。
クニコ:あれ?ここにいるはずなのに捕まえられない。
それもそのはず。クニコが見たものは先ほど見たリスの魂だったのだ。
リスは魂だけがついてくることに成功したのだ。
だが、その魂はクニコ以外の人には見えないものとなっている。
第2章 一心同体

クニコは、周囲に誰もいないのを確認してリスの魂にそっと話しかけてみた。
クニコ:シマシマ模様のリスさんだから、名前はシマちゃんで良い?
リスの魂は、コクッと頷いてすぐに仲良くなった。
シマは魂なのでクニコだけにしか見えない生き物だった。
両親には見えるはずのないシマとの会話について、クニコの一人遊びとして受け止めていた。
月日は流れ、クニコは3歳の誕生日を機に幼稚園に通うことになった。
お母さん:クニコ、明日から幼稚園だね。沢山お友達を作ろうね。
クニコ:シマちゃんも一緒に連れていく
お母さん:シマちゃん?
事情を知らないお母さんはそういうしかなかった。
そんなクニコを見て、
シマ(ジェスチャー):みんなの前では出ないから通園バッグの中に入れて連れて行ってほしい
クニコ(小声):そうか!カバンの中に入れておけば良いのか。だけど、それだとシマちゃんが苦しくならない?
シマ(ジェスチャー):大丈夫
コクッとうなずく。
クニコは翌朝から素直に幼稚園に通うようになった。
クニコには幼稚園での友だちが何人か出来た。
時々通園バッグの中にいるシマの様子を見ながら友達と遊ぶ機会が増えてきた。
クニコはシマの存在を他の人に知られたらどう思うだろうという不安感があったが、クニコ以外の人には見えないので安心だった。
ところが、ある日の幼稚園の帰り道にクニコは突然意識を失って倒れてしまった。
お母さん:クニコ!クニコ!
とクニコを揺さぶりながら泣き叫んでいた。
お母さんには見えないはずのシマはリスの魂なので、自分をかわいがってくれているクニコの中に入り込んでクニコになったのだ。
シマの魂が入ったクニコは不意にムックリと起き上がって、辺りを見回した。
体の小さかったシマにとって、世界が小さく見えてしまうので今までとは勝手が違うが、人間の世界としてクニコになり切らないといけないことはすぐに察することが出来た。
体はクニコで心はシマという一心同体になったという自分はこれからの世界をどう切り開いていくのか…。
第3章 シマの友達ドット

事情の知らないお母さんは、ビックリした。
お母さん:クニコ?
と呼んだが、クニコ自身の魂が抜けてしまっているので自分の事とは気が付かない様子。
お母さんとしてはとりあえず、意識が戻ったクニコの手を引いて家に連れて帰るしかなかった。
クニコは自分の心をなくしてしまったが、シマの魂が動かしてくれるのでシマに任せる形の生活になった。
体は人間で心は動物というちょっと変わった女の子になってしまったが、その後はクニコにとってもシマにとってもお互いに自分の人生を楽しめるようになっていくということは、当人たちも知る由がなかった。
20xx年、クニコは5歳の誕生日を迎えたがシマの魂が入っているために、無口で何を考えているのか当人にもわからない状況にあった。
幼稚園で友だちと遊ぶ姿は普通の女の子のように見えているが、帰宅するとシマの魂が甦るためか部屋中を駆けずり回る行為が絶えなかった。
そんな頃、お母さんは体調を崩しかけているようで顔色が冴えないことが増えたのでクニコは不思議そうに思っていた。人間の魂だったら、お母さんを気遣う事もできるが、シマの魂で動いているクニコにはお母さんの体を気遣うことは難しかった。人間離れした行動を起こすようになったクニコを見ているお母さんはクニコをどう扱っていいものかわからなくなってしまっていた。
クニコは自分の部屋に戻り、幼稚園で拾ったドングリの実同士をぶつけ合いカツカツと音を立て始めた。
何のためにドングリをカツカツ叩くのかわからないクニコだったが、そのうちシマの友達のドットがクニコの部屋の窓の外に来たのを発見した。
シマには何か困ったことがあると、ドングリの実でカツカツと音を立てることで友だちを呼び寄せる能力が備わっていたのだ。
シマの魂としては、人間の心を忘れてしまったクニコに、人間らしさを取り戻してあげたいと思っていたのだ。
シマの友達のドットは、クニコにピンクのリボンと説明書を渡した。
説明書:このリボンを着けていればシマの魂が抜けて、本来の人間としての心に戻ることが出来る。ただし、このリボンの秘密は他人に知られないように気を付ける事が条件だよ。
説明書を見たクニコ:ありがとう
ドットの目を見ながらお礼を言うと、ドットはその場からいなくなった。
クニコは人間の心に戻りたいと思えば、ピンクのリボンを着けることで、より人間らしい生き方が出来るようになった。 試しに着けてみることにした。
鏡の前で髪にピンクのリボンを着けて、いざ変心?
すると、今までクニコにはなかった感情が芽生えてきたのだ。それと同時にシマの魂が見えるので、自分でも不思議な感覚になっているのである。
第4章 シマとの別れ

それから数日後、クニコはピンクのリボンを着けて幼稚園に行く支度を終わらせてお母さんの所へ行った。
お母さんはすぐにクニコのリボンに気が付いた。
お母さん:まぁ、かわいらしいピンクのリボンを着けて。どうしたの?
クニコ:あっ!さわらないで? このリボンものすごく大事なものなの。自分で着けたいときに着けるだけだけどね…。
お母さん:そう。良かったわね。
クニコ:うん? 幼稚園に行ってきます。じゃね!
クニコはあまり母に触れられないようにその場から立ち退いた。
クニコは幼稚園に行くときピンクのリボンを忘れずに着けるようになった。
やはり人間としての仲間意識を作りたいのである。
幼稚園での友だちも2人出来た。ユキちゃんとハルちゃんである。
ピンクのリボンの効果は普通の人間らしさが出ていて、かくれんぼや、だるまさんが転んだなどの遊びも満喫していた。クニコがピンクのリボンを着けている間、シマの魂は本当のシマの所に戻っているので他人に見られる心配はない。
幼稚園から帰ったクニコは自室に戻り、鏡の前でリボンを外す。その頃にはシマの魂はクニコの部屋に待機しているのでリボンを外したらシマの魂が戻り、人間になっている間の疲れが出て寝てしまうのである。
シマの魂が入っているクニコはよく寝る子だった。それでも幼稚園に行くときは張り切って起きていた。
やがて小学校に通うようになり、クニコはお姉さんらしくなった。
シマの魂はそろそろ元の生活に戻らないといけない。
クニコはピンクのリボンを着けてお母さんに、
クニコ:2歳の時に行った動物園にまた行きたいとお願いをした。
その週の日曜日に動物園に連れて行ってもらい、ピンクのリボンを着けたクニコはシマの魂を本当のリスのそばにそっと戻してあげた。
クニコ:今までありがとう。これからはシマらしくノビノビと暮らしてね。
終わり

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

この作品は、当事業所の利用者さんが執筆したものです。
著作権は当社にございますので、無断使用転載禁止いたします。

尚、ライティング依頼はいつでも承っておりますので、下記までお気軽にご連絡ください。
TEL 093-581-9888(受付時間 9:00~17:00 休業日除く)

メールは24時間受付けておりますので、業務依頼の際はこちらもご利用ください。
dreamnetsystems@gmail.com

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆