発達障害でつまずく人、うまくいく人 まとめ

2011年初版発行のこの本は、成人の発達障害の人たちの状況を一人でも多くの人に理解して欲しいと願い、書かれたものである。 2001年4月、東京・浅草の路上でレッサーパンダの帽子を被った青年が短大生を刺殺する事件が起きた。自閉症の特性で強いこだわりを持つため、かえって目立つ格好で犯行におよんだ事件として、当時話題になったようである。しかし、著者が出会った自閉症の子どもたちは、いつも穏やかであまり突飛なことも言わず、優しく目立たないいい子たちばかりだったそうだ。こうした事件は珍しいケースであるにも関わらず、同じ特性を持っているというだけで世間から冷たく見られることに、自閉症の子どもをもつ親たちは深く悲しむ。 発達障害への理解とちょっとした配慮があれば、本人にも周囲の人たちにも生きやすい社会になるということ、それをみんなに分かってもらうことを著者は期待している。


みなさんは「自閉症スペクトラム」という概念をご存知だろうか?自閉症というと、知的機能と言語発達に遅れが見られる脳機能障害で、社会性や他者とのコミュニケーション、想像力に困難が生じることが特徴だが、その程度がすごく軽く知的にも高い人たち(ほとんど健常)から極端に重い人たちまで、同じ特性を持ち“連続性”が認められる、それを自閉症スペクトラムとするというものだ。その中の細かい診断名として「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」「特定不能の広汎性発達障害」「カナータイプの自閉症(自閉性障害)」など、その周辺的特性として「AD/HD注意欠陥・多動性障害」「LD学習障害(読字障害ディスレクシアなど)」などが人によっては存在する。
つまりそういう考え方からすると、誰にでも多かれ少なかれそういう特徴があって、その程度の差が社会生活に支障が出るかどうかというのが問題であり、そうした傾向があることで過剰に不安にならなくてもいいのでないかというのが、著者の思いである。ではその特徴の細かい部分を見ていこう。

発達障害者の人口は全体の約1%、日本では約130万人いるとされ、診断の基準は『三つ組の障害』があるかないか、しかもそれによって社会生活に支障が出ているかどうかを確認する。
まず一つ目。「社会性の障害」 仕事やプライベートで周囲の人と波長を合わせ行動できない、ルール・マナー・エチケットに配慮することが困難。例えば、身だしなみや服装で注意を受け、空気が読めなかったり、暗黙の了解が分からず、雑談や飲み会のどこが面白いのか分からない、その場にいると苦痛・不安を感じる。一つの仕事に集中してるときはいいが、二つ三つと重なると、段取りが分からなくなる・・など。
二つ目。「コミュニケーションの質的障害」
その場に応じた表情や態度、言葉を使って他者と関わり合うことが苦手。その中で不安や恐怖を感じることも。相手と視線を合わせられない。冗談が通じない。遠回しな言い方が理解できない。本音と建前を使い分けられないのでウソをつくことが苦手。ついてもすぐにバレる、また言葉のウラが読めず、「文字通り」に理解する・・など。
三つ目。「想像力のズレによる常同反復・こだわり」
物事や人には都合があり、予定が変更になることが納得できない。いったん好きなことを始めると、明日の予定に関係なくやめられなくなる。物事には決まったやり方があり、それを少しでもはずれると気に入らない・・など。
こうした三つ組の障害があることに加え、自分自身が非常に困っている人、意図せずも周りを振り回したり、場合によっては迷惑をかけている人が診断の対象となるのである。
また、この他にも、「感覚の偏り(過鈍もあるが多くは過敏)」というのがあり、周りの雑音や他人の会話してる声などが、ヘッドホンで聞いてるように耳に飛び込んでくるので、目の前の作業に集中できなくなったり、特定の花の匂いや香水の匂いを嗅ぐと気分が悪くなる、服用する薬が効いたり効かなかったりする、寒暖の差がつらく感じられる、感情の揺れ幅や驚愕反応がとても大きい、不眠の傾向など、こうした特徴で苦しんでいる人たちもいる。
この「三つ組の障害」と「自閉症スペクトラム」という概念を、イギリスの精神科医ローナ=ウィングが発見、社会に認めさせたことにより、知的には遅れはなくとも行動上で困っている多くの人たちが、福祉的な援助を受けられるようになった。自閉症の本質を知的な障害・言語的な障害ではなく、社会性・人間関係の障害であると提唱し、社会に定着させたことはローナ=ウィングの偉大な功績である。1981年のことであった。

自閉症スペクトラムの中の一つ、アスペルガー症候群には三つの性格タイプがあると言われる。性格の偏りで生きづらいというのは、持って生まれた発達障害の特性が先天的な「一次障害」であるのに対し、その特性が招いた後天的な災いという意味で、いわば『二次障害』である。発達障害の概念が普及してなかった頃は、「変わっている」「うるさい」「わがまま」「面白くない」と非難されたりしていた。子どもは感情表現がストレートなため、のけ者にされたり、いじめられたりする。ずっとそういうことを言われたり扱われたりしているうちに、性格の偏りが生きづらさへと変わる。以下、紹介しよう。
【積極奇異型】
人付き合いを自ら積極的に求め、納得するまで質問したり根掘り葉掘り聞いたりする。初対面の人や親密でない人に、プライベートな領域を土足で踏み込んでしまうため、人から「変わっている」「うるさい」などと評価を受けた結果、人に対して否定的で対立的な態度を取るようになる。人付き合いには興味があっても、あまり自分から求めなくなる人も出てくる。
【受動型】
発達障害の典型的なタイプ。人付き合いにはもともと積極的ではない。ただ、求められると穏やかに人と接し、いつもニコニコとおとなしい印象で、周りから浮いているというよりも、一人ポツンとしてあまり目立たない。
【孤立型】
そもそも人付き合いが苦手で、求められても応じない傾向がある。周りの人を拒絶しているように見えるが、本人は一人でマイペースに過ごしたいだけである。
ローナ・ウィングによると、アスペルガーの性格タイプはこの三つに分類できるが、養育環境やどんな人と接して来たかでも性格傾向は異なり、積極奇異型が受動型や引きこもりなどの孤立型へと変わったりすることはよくある。周りからネガティブな評価ばかり受けて来た彼らの中には、周囲の人間に不信感を募らせ、対人関係に敏感になり、自己評価が低く被害者感情が芽生えたり自責的になったりする。自分を認めることができないと他者とうまく付き合えなくなり、適切なコミュニケーションが取れなくなる。そうなると問題である。

そもそもこうした発達障害の原因は何なのか?現在のところ、遺伝的要因による先天的な脳機能の偏りにある、というのが有力な説だ。ただ、まったく家系にそういう特性を持った人がいないのに、あるストレス要因で発症することもあるという。
脳機能の偏りの一つと言われるものに、脳内の神経伝達物質セロトニンのバランスが生まれつき偏っているという仮説がある。セロトニンとは心のバランスを整える作用があり、不足すると暴力的(キレる)になったり、うつ症状や強迫症状(強いこだわり)を発症しやすくなったりする。セロトニンは、朝日を浴びたり、軽い運動(ウォーキングなど)をしたり、規則正しい生活やバランスの良い食事(特にタンパク質の適度な摂取)をしたりすれば自然と活性化されるので、発達障害の人の脳にはそれらを特に意識して実践した方がよいだろう。 この本は、発達障害のことを初めて知るにはとても分かりやすい本である。専門的な内容が知りたければ他の本をおススメするが、そうでない人はこの本から入るときっと良いだろう。発達障害とうまく付き合うために、本人や周りの人たちはどうすればいいか?要点が丁寧に書かれているので、ぜひ一読して欲しい一冊である。 そして、お互いが生きやすい社会になることを願う。

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